カントリー

私は10代の初めから20代半ばまではブルーグラスという音楽をやっていて、バンドではマンドリンを担当していました。

その後、ブルースに出会い黒人音楽に傾倒していく中で、カントリーのサウンドに魅力を感じられなくなりバンドもやめてR&Bなどを歌い始め、ゴスペルの世界へと行きつきます。

しかし最近、僕は家でも通勤でもカントリーばかり聴いています。5年前からギターを弾くようになったことも大きな理由の一つですが、それよりもカントリーのヴォーカル・スタイルに若いときには気づかなかったあらたな魅力を感じるようになったからです。

20代半ばでカントリーをやめた時は、とにかくコードのシンプルさ、2ビートのリズムの単調さに嫌気がさして(カントリー・ファンの方、ごめんなさい。今はそうではない事もわかっています)、もっと刺激の強いものを探していました。

しかしファンクやR&Bなどで、トリッキーな演奏の中歌っていたり、バラードでメリスマやシンコペーションを多用した歌い方ばかりしているうちに、本来の自分を見失うようになりました。

技術に走り、とにかく「すごい」とか「上手い」と言われるために必死で練習していましたのでそれなりの評価は得ていましたが、いざ自分の歌を録音したものを聴いても、それを好きになれることは一度もありませんでした。

好きな曲を自分流にアレンジして、より自分の好みに近づけているはずなのに全然気持ちがワクワクしないのです。

そのうち自分の歌の弱点がはっきりしてきました。シンプルなコードでシンプルなメロディを朗々と歌うことができなくなっていたのです。

美しいメロディを持つ楽曲の、素地が表現できないのは僕の中では「致命的に下手」な部類に入ります。そんな歌手に自分が知らないうちになっていたことはとてもショックでした。

「シンプルな美しい曲を、ただシンプルに歌いたい。」

そんな思いが強くなって葛藤していた頃に、itunesの新しいサービスが始まりました。月1000円で10万曲が聞き放題というものです。

軽い気持ちで便利かなと思ってサービスに登録したのですが、しばらくするうちに自分で曲を探すのもめんどくさくなって、itunesが勝手にセレクトしてくれる「radio」を利用するようになりました。

ある日、お風呂に入りながら気まぐれで選んだ「Modern Country Music」を聴いていたら、そこには僕が長い間悩んでいたものの答えがありました。

楽観的、単純などと思っていたカントリー音楽でしたが、お風呂の中で一緒に真似をしてみると、いかに自分が「歌を歌うために不必要なこと」をしていたかがわかった気がしました。本当にあの日、あの時間にお風呂に入って良かった・・。

2017年、私は30年ぶりに初心者としてカントリーに向き合うことを決めました。技術を全部捨ててしまうわけではありません。それは無理です。でも技術を技術として聴かせないというより高度な歌い方にチャレンジしたいと思います。