緊張ってなんだ
ゴスペル教室はうちもそうですが、大抵はたくさんの人とのグループ・レッスン形式となります。
「歌を歌ってみたいなあ」と思っていざ始めてみると周りにはたくさんの初対面の人がいて、そんな人たちの前で今までやったこともないことにトライする。これってなかなか勇気のいることですよね。
たくさんの人がいるなかで、要領の分からない状態になると、脳にノルアドレナリンが過剰に分泌されて、交感神経が活発化します。適度であればそれは潜在能力を引き出すのに大いに役立ちますけど、活発化しすぎると自律神経のバランスが悪くなります。
これが俗にいう「緊張状態」です。
この自律神経や脳内分泌は自分の意志でコントロールできるものではないそうです。
緊張すると冷や汗が出たり、手が震えたり、人によって身体には様々な反応が出ます。これはやっかいなものだと思いがちですが、ある意味、動物としての生存本能が働いているわけですから、生きていくには必要な「能力」だと思えばいいと思います。
ただ、現代社会に生きる私たちは野生の動物のように毎日外敵に食べられるというような心配をしながら生きているわけではありません。そのかわり野生動物にはない心配事や悩み事は多々ありますけど・・。笑
さて本題に戻りましょう。
たかが人前で歌を歌ったり、パフォーマンスをするだけなのに、身体が過剰に防衛反応してしまうことを防ぐにはどうすればいいのでしょう?
まずノルアドレナリンが分泌される原因を無くすことを考えてみましょう。
いわゆる「あがり症」の人のほとんどは、「失敗したらどうしよう??」と意識に支配されがちです。自分があがり症であることがトラウマとなっているため、手の震えなどが出た瞬間に、「失敗」という結果に直結します。その恐怖と闘いながら歌うわけですから、まあ満足のいく結果を得るのも難しいでしょう。
「失敗したらどうしよう」
まずこの気持ちを客観的に分析してみましょう。「失敗」と「どうしよう?」に分けます。
「失敗した先に何があるのか」という答えが曖昧な状態なので、まるで底の見えない奈落の闇の中に落ちてしまうイメージが先行して、その恐怖から必要以上に失敗を恐れ、まだ起こっていないことへの不安が頭の中を支配しているに過ぎません。
他人に置き換えて冷静に考えてみましょう。
「人前で歌う」→「失敗する」
この先に何があるでしょう?
答えは「いまと変わらない。もしくはかすり傷」です。
ゴスペルは合唱アンサンブルというちょっと特殊なものです。パートの違う人が隣にいたら、自分とは違う音で歌ってたりするわけで、慣れればそのハーモニーを楽しめるようになりますが、初めはいろんな音の洪水の中で自分のメロディをキープすること自体が難しい。
難しいことにトライするわけですから、出来なくて当たり前なのです。結論から言えば、ある程度の失敗を重ねない限り、歌が上手くなることはあり得ません。たまに卓越した勘や才能の持ち主がいますが、その人はその人で何でもある程度すぐにできてしまうゆえの悩みがあるはずです。
歌に関して言えば「失敗」はすべて「経験値」です。経験値にマイナスはありません。成功しようが失敗しようが経験値は常にひとつ上がります。
歌は私の経験上、右肩上がりに上達するものではありません。ある日突然階段を一段上がるように上手くなります。逆に言えば、その階段が目の前に現れる日までは何度やっても失敗します。
一見長い間成長できないように感じますから、人によっては「自分には向いてない」と諦める場合もありますが、それは私に言わせれば、「夢中になるほど好きではなかっただけ」だと思います。
子供が新しい遊びに夢中になり、何度も同じことをせがんだりしますが、そこには「失敗」への不安などはありません。大人から見れば意味のない行動のくり返しでも、子供はその「遊び」自体が楽しいのであって、飽きるまでやり続けます。
それでもまだ失敗自体が怖い人は、失敗する訓練をすればいいのではないでしょうか?
柔道ではまず初めにやらされるのは「受け身」の訓練です。
受け身というのは投げられた時にけがをしないためのものですが、試合でいえば投げられたら負けです。言ってみれば「負ける瞬間」の練習からはじめるということになります。
なぜなら強い人と練習する初心者は100%投げられるからです。投げられるのを怖がったり嫌がって強くなる人はいません。
長くなりましたが、人生において「歌がうまく歌えなかった」という出来事のリスクなんてほとんどありません。ましてや教室でのレッスン内では皆無です。本番でたくさんの知り合いが見に来てくれてるところで失敗したとしても、恥ずかしいけどやはりダメージ・レベルでは大したことないと思います。
それよりも失敗を恐れすぎる生き方のほうが長期的に見ればダメージはでかい気がします。
みんな仲間なのですから、おおいに失敗をさらけ出してください。それさえできれば緊張せず力を抜いて歌えます。